幼い子どもを持つ母親の視点で、子宮頸がんの予防啓発に取り組む団体が出てきた。
全国各地のママサークルが連携した一般社団法人「スタンド・フォー・マザーズ(sfm)」(東京都港区)。活動を担うのは、主に20歳代の若いママたちだ。「子宮頸がんは同世代に多い病気。病に倒れる母親を、そして悲しむ子どもや家族を一人でも減らしたい」と、様々な知恵を絞っている。
■ママがママを支える
sfmは、「ママがママを支える」の理念のもと、東日本大震災の被災地におむつなどの支援物資を送り届けるため、各地のママサークルに呼びかけて誕生した。今春からスタートした子宮頸がん予防啓発プロジェクトでは、日本対がん協会(東京)の協力を得て、これまで東京、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の6都市でママたちを集めたイベントを開催してきた。
現在は、子宮頸がんについて正しく知ってもらい、検診を広く呼びかけようと、小冊子づくりに取り組んでいる。
11日、東京・赤坂のビル会議室に若い母親ら約50人が集まり、冊子で伝えたいことなどについて話し合った。付けまつげで目元を強調したメークに、キラキラ光るネイル。華やかな服装に「ギャルママ」「若ママ」などと呼ばれることもあるが、議論する表情は真剣そのものだ。
「子連れでも、友だちと一緒なら検診を受ける間、お互いに子どもを預けあうこともできる。サークルで受診できるといい」
「パパや男の人たちにも、もっとこの病気について理解してもらいたい」
■「一緒に検診に行こう」
「がん治療は経済的にも、精神的にも重く家族にのしかかる。ぜひ定期的に検診を」と呼びかける松田さん
「10年前に子宮頸がんになり、手術を受けたシンガー・ソングライターの松田陽子さん(41)(sfm理事)が、ママたちを前に自身の体験を披露し、検診の大切さを呼びかけた。
「娘が1歳半の頃、なかなか腰痛が治らなくて、ふと思いついて産婦人科を受診しました。その時は20代、30代でがんになんてなるわけない、検査なんて必要ないのに、と思ったけど、1週間したら電話がかかってきて、『子宮頸がんです』と言われ……」
4時間半に及んだ手術、ものすごい痛み、そして手術で失ったのは子宮だけではなかったこと。
「退院した後、なんで私ばっかりこんな苦しまなくてはならないのって、ついダンナに苦しい思いをぶつけてしまった。私の場合は、一番支えてほしいときに気持ちがすれ違って、結局離婚することに。お母さんが太陽のように笑えてこそ、あったかい家庭。皆さんには、周囲の友だちに一緒に検診行こうって言ってほしいのです」
会場では赤ちゃんに離乳食を与えるママも
初めて参加したという母親(26)は、「今までは他人事と思っていたけど、自分に関係のあることだと分かりました。子どもの病院にはすぐ行くのに、自分のことはついつい後回し。でも早く検診の時間を作りたい」と話した。
日本対がん協会の小西宏さんは、「日本では受診率が20~25%だが、欧米では8割前後。ブログなどを通じた若いママたちの発信力で、ぜひ受診率を押し上げてほしい」と期待を寄せている。
小冊子は10月下旬に完成予定。詳しい活動についてはsfmのホームページ(http://sfma.jp/)へ。
(2012年9月13日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/hellosmile/htopics/20120912-OYT8T00960.htm
【ロゴ:Hellosmile】